平成26年2月18日(火)法務大臣閣議後記者会見の概要
裁判員経験者から大臣への要請書に関する質疑について
【記者】
昨日,裁判員経験者の方々が大臣宛てに要請書を提出されました。要請書は,死刑の実情に関して詳細な情報公開がされないままに裁判員裁判による死刑判決確定者の執行がされた場合,関わった裁判員の方々が大きな悩みを抱えることになると訴えています。こうした要請書が提出されたことについての受け止めと,要請書が求める死刑の執行停止,死刑に関する情報公開,国民的議論を促すといった内容について,大臣はどのようにお考えかをお聞かせください。
【大臣】
要請書は拝見いたしました。死刑制度にはいろいろ議論がございますけれども,一つの御意見として参考にさせていただきたいと思っております。
死刑の執行を停止すべきではないかということがその要請書にもございましたが,当然のことではありますけれども,死刑は極めて重大な極刑と申し上げていいと思います。したがいまして,その執行に際しては慎重な態度で臨む必要があると,私自身にもそう言い聞かせ,今までの記者会見でもそのことはしばしば申し上げてきたわけですが,同時に,法治国家におきましては,確定した裁判の執行は厳正に行われなければならないということ,これも当然のことだと思います。
直ちに死刑の執行を停止せよという要請につきましては,これは一律に死刑の執行を停止することをお求めになっているのだと思いますが,死刑は裁判所が慎重な審理を尽くした上でそういう判断を出されたわけでありまして,法務大臣としては,その執行を全て差し止めるというような法的措置が採られない限り,一律に執行を停止することはできないと考えております。また,一時的に執行を止めるということであるとしても,私の判断は,国民の多数が死刑というものは必要である,やむを得ないというお考えだと思います。死刑の執行が停止された後にまたこれが再開されるというようなこと,そういう不安定な,不確定な状況で執行を停止するということになりますと,これは死刑確定者の方々に,いったんは執行されないのではないかという期待を持たせて,またそれがひっくり返るということになるため,かえって非人道的なことになるのではないかと思います。したがって,一時執行を停止するということについては,先ほど法律の根拠がない限りできないと申し上げましたけれども,同時に,そういう問題点もあるように私は思います。
それから,情報公開に関しては,死刑に対する国民の理解を求めるといいますか,可能な範囲で情報公開をして,死刑の執行が適正に行われているということについて,国民の理解を得る必要があると私も思います。これは既に平成19年12月からですが,死刑執行後に,執行を受けた者の氏名,生年月日,それから犯罪事実,執行場所等については公表することにしております。これをもっと拡大せよという御意見もありますが,これは死刑の執行を受ける方やその関係者に対して,どのような不利益あるいは精神的苦痛があるか,また,他の死刑確定者の心情の安定といったことも十分考慮しなければならないので,私は現在のところ,現状の公開を超える事項については,余り前のめりになることはいかがかと考えております。
【記者】
死刑執行の情報公開について,他の死刑確定者の心情や御遺族の気持ちを考えると,これ以上前のめりになることはないと思うとおっしゃいましたけれども,その一方で,昨日,要請書を出された方は,もしこのまま執行がされたら自分たちが苦もんする,混乱するというふうに訴えておられました。裁判員を経験された方のそういう判断に関わられた気持ちを考慮すると,その辺はどのようにお考えになっているのかをお聞かせください。
【大臣】
私もかつて司法修習生のときに,極めて深刻な殺人事件を扱っている刑事部で修習したことがありましたけれども,論告や求刑が一体どうなるのかということに対して非常に重圧を感じたことがあります。裁判官,あるいは検察官,弁護人にしても,こういう死刑の求刑などについては,それなりに教育・訓練を受けているわけですけれども,裁判員の方々がそういうプロの方とは違うという点は,これからもいろいろ考えていかなければならないことがあると思います。ただ,裁判員の方々にそういうお気持ちがあるからといって,すぐに公開できるかということは,広い意味での比較衡量をするということでしょうけれども,私の判断は,そういうことがあってもやはり受刑者の心情や,あるいは関係者のいろいろな名誉などを考えた場合に,いろいろな御異論はあると思いますが,私は今のところ先ほど申し上げたような判断でございます。