いわゆる「松戸女子大生殺害放火事件」 | 出典 | ||
事件発生日 | 2009年10月20日~22日 | 第一審判決 | |
被告人/受刑者 | 竪山辰美(たてやまたつみ) | 毎10.2.17夕 | |
年齢 | 再逮捕時(10.2.17) 48歳 | 毎10.2.17夕 | |
事案の概要 | 千葉県松戸市内のマンションの一室が放火され、当時21歳の女子大学生の遺体が発見された事件。女子大生は帰宅時にすでに侵入していた男に暴行脅迫を受け、包丁で突き刺されて死亡しており、強取されたキャッシュカードで現金が引き出されていた(松戸事件)。逮捕された男は、この事件の前後約2か月間に女性5名に対する強盗致傷、強盗強姦等を起こしており、服役を終えて出所後3か月足らずの間にこれらの犯行を行っていた。裁判では犯行態様および殺意の有無と量刑判断が争点となった。 | ||
第一審 | 裁判年月日 | 2011(平23)年6月30日 | 裁判所ウェブサイト |
裁判所名・部 | 千葉地方裁判所 刑事第2部 | ||
事件番号 | 平成21(わ)2832 | ||
量刑 | 死刑 | ||
裁判官 | 波床昌則 中尾佳久 福岡涼 | ||
量刑の理由 | 被告人が、約2か月の間に、強盗殺人、現住建造物等放火の各犯行に加え、強盗致傷や強盗強姦、同未遂等の各犯行合計13件に連続的に及んだ、という事案について、(1)強盗殺人、現住建造物等放火等の事件の殺害態様が執ようで冷酷非情であり、放火も危険性が高く、結果が重大であること、(2)同事件の前後の強盗致傷、強盗強姦等の事件が悪質で重大であること、(3)前科があるのに本件に及び、短期間の犯罪の反復累行性に現れた被告人の人格の反社会性が顕著であること、(4)被告人が真に反省しているとは評価できず、更生可能性に乏しいことなどにかんがみると、殺害された被害者の数が一人であること、殺害に計画性がないことなどを十分に考慮しても、その刑事責任は誠に重く、被告人を死刑に処するのが相当であるとした事例 | ||
控訴審 | 裁判年月日 | 2013(平25)年10月8日 | 高裁刑集66巻3号42頁
東高刑時報64巻192頁 |
裁判所名・部 | 東京高等裁判所 第10刑事部 | ||
事件番号 | 平成23(う)1947 | ||
結果 | 破棄自判 | ||
裁判官 | 村瀬均 秋山敬 河本雅也 | ||
裁判要旨 | 被告人は、強盗殺人等の事件のほか強盗致傷や強盗強姦等を犯したものであるが、量刑判断の中心となる強盗殺人等の事件について、殺害態様が執拗で冷酷非情であり放火も危険性の高い悪質な犯行であること、結果も重大であることを十分に考慮しても、殺害された被害者が1名であり殺害行為に計画性を認めることができないことを踏まえると、死刑を選択することが真にやむを得ないとはいえず、被告人が短期間に強盗致傷や強盗強姦という重大事件を複数回犯したことや粗暴な性格傾向が著しいことなどの原判決が指摘する特有の事情に関しても、本件強盗殺人等の事件以外には前科も含めて殺意を伴う犯行はなく、法定刑に死刑が含まれる多くの犯罪にみられるような人の生命を奪って自己の利欲等の目的を達成しようとした犯行ではないことなどを考慮すると、上記特有の事情があることを理由として死刑を選択し得るとした原判決の判断は合理性のある評価とはいえず、無期懲役刑と死刑という質的に異なる刑の選択に誤りがある。 | ||
上告審 | 裁判年月日 | 2015(平27)年2月3日 | 刑集69巻1号99頁 |
法廷名 | 最高裁判所第二小法廷 | ||
事件番号 | 平成25(あ)1729 | ||
裁判種別 | 決定 | ||
結果 | 棄却 | ||
裁判官 | 千葉勝美 鬼丸かおる 山本庸幸 | ||
裁判要旨 | 女性1名を殺害するなどした住居侵入、強盗殺人、建造物侵入、現住建造物等放火、死体損壊等のほか、その前後約2か月間に繰り返された強盗致傷、強盗強姦等の事案において、女性の殺害を計画的に実行したとは認められず、また、殺害態様の悪質性を重くみることにも限界があるのに、同女に係る事件以外の事件の悪質性や危険性、被告人の前科、反社会的な性格傾向等を強調して死刑に処した裁判員裁判による第一審判決の量刑判断が合理的ではなく、被告人を死刑に処すべき具体的、説得的な根拠を見いだし難いと判断して同判決を破棄し無期懲役に処したものと解される原判決の刑の量定は、甚だしく不当で破棄しなければ著しく正義に反するということはできない。(補足意見がある。) | ||
備考 | 千葉県松戸市内のマンションの自室に帰宅した女子大生が包丁で刺されて殺害され、その翌日に居室が放火された事件。キャッシュカードによって現金も引き出されていた(以下「松戸事件」)。この松戸事件の前後2か月の間に、竪山受刑者は、民家等への住居侵入の上窃盗に及んだもの3件、強盗致傷2件、強盗強姦・監禁・キャッシュカード等を使用した現金窃盗1件、強盗強姦未遂1件、の犯行に及んでいた。服役を終えて出所後3か月足らずの間の犯行だった。
公判において、竪山受刑者は、「自分の命をもって償いたい」と反省の弁を述べたが(朝日11.6.10朝)、松戸事件における殺意に関しては、被害者に「奪われた包丁を取り返そうともみ合いになり、刺さってしまった」として殺意を否認した(毎11.6.22朝)。 この判決に対し、「量刑自体には不服はないが、殺意に対する事実認定に不服がある」として竪山受刑者本人が控訴(毎11.7.7.夕)。 検察・弁護側の双方が上告。 |