いわゆる「神戸・小1女児殺害事件」 | 出典 | ||
事件発生日 | 2014年9月11日 | 一審判決 | |
被告人/受刑者 | 君野康弘 | 毎14.9.25西部朝 | |
年齢 | 逮捕時(14.9.24) 47歳 | ||
事案の概要 | 神戸市長田区で当時6歳の少女が誘拐・殺害され、切断された遺体が雑木林等に遺棄された事件。遺棄現場近くに住む男が逮捕され、裁判では量刑要素の評価が争点となった。 | ||
第一審 | 裁判年月日 | 2016(平28)年3月18日 | D1-Law
TKC |
裁判所名・部 | 神戸地方裁判所 第4刑事部 | ||
事件番号 | 平成27(わ)56 | ||
量刑 | 死刑 | ||
裁判官 | 佐茂剛 中川卓久 若林貴子 | ||
量刑の理由(要旨) | 殺害の計画性の有無にかかわらず、犯行全体として生命軽視の姿勢が甚だしく顕著であり、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも、本件において死刑の選択は真にやむを得ないと認めざるを得ない。 | ||
控訴審 | 裁判年月日 | 2017(平29)年3月10日 | D1-Law
TKC |
裁判所名・部 | 大阪高等裁判所 第4刑事部 | ||
事件番号 | 平成28(う)425 | ||
結果 | 破棄自判 | ||
裁判官 | 樋口裕晃 柴田厚司 佐藤建 | ||
破棄理由の要旨 | 量刑要素の過大評価、および殺害の計画性が認められず、他の同種事案の量刑との比較から死刑判決は許容できず、無期懲役が相当である | ||
上告審 | 裁判年月日 | 2019(令1)年7月1日 | 裁判所ウェブサイト |
法廷名 | 最高裁判所第一小法廷 | ||
事件番号 | 平成29(あ)605 | ||
裁判種別 | 決定 | ||
結果 | 棄却 | ||
裁判官 | 山口厚 池上政幸 小池裕 木澤克之 深山卓也 | ||
備考 | 神戸市長田区で当時6歳の少女が誘拐、殺害され、切断された遺体が雑木林等に遺棄された事件。 遺棄された遺体が入っていたポリ袋に君野受刑者名義の診察券が見つかったことから君野受刑者が逮捕され、袋の中にあったたばこの吸い殻と君野受刑者のDNA型も一致した(毎14.9.25西部朝)。逮捕された当初の君野受刑者は黙秘を続けていたが、逮捕後約1か月から事件について供述を始めた。黙秘から一転して事件を認めた理由については「気持ちの整理がついた」と説明し、謝罪の言葉を口にしていたという(毎14.10.22西部朝)。 起訴前に鑑定留置して精神鑑定が行われ、責任能力を認める結果が出ている(毎15.1.23大阪朝)。この鑑定では、君野受刑者はアルコール依存症候群にり患しており、犯行当時も飲酒による酩酊状態だったが、犯行自体は本人の自由意思によりその性格特性と性的嗜好を基盤として能動的に行われたものである、また、君野受刑者の知的能力は心理検査の点数上は知的障害と正常の境界域にあるが、日常の生活状況を考慮すると知的レベルは正常範囲である、とされた。(ちなみに、飲酒に関して一審判決は「被告人は、本件犯行に至るまでに飲酒に関わる犯罪により服役を繰り返していたのに、なおも飲酒を継続していた」と指摘している) 第一審判決によると、君野受刑者と被害者は面識はなく、君野受刑者は「絵のモデルになってくれないか」と被害者を自宅に誘いこんだという。被害者を自宅に誘い込んだ後、誘い込んだことの発覚をおそれるとともに、騒がれずにその身体を見たり触ったりしたいと考えて殺害を決意し、ビニールロープを頸部に巻き付けて締め付けた上、後頸部を包丁で4回以上突き刺して殺害、遺体を投棄するための準備に加え、同遺体に対する関心や性的欲求の満足のため、包丁で腹部を切り裂くなどし、身体を4つに切断したほか両乳首付近の皮膚をそぎ取るなどした上、複数のビニール袋に入れるなどして雑木林等に投棄したとされた。 控訴審で、弁護側は、わいせつ目的の誘拐ではなかったとして事実誤認や量刑不当などを主張。判決は、当初からわいせつ目的があったとする原審の認定を支持するなど量刑不当以外の弁護側の主張は全て退けたが、量刑不当に関しては、原判決は動機の身勝手さを被告人に不利益な量刑要素として過大に評価している、殺害の計画性が認められないことを不当に軽視したものである、殺害の目的に比してその手段方法が過度の攻撃であると評価した点は是認できないとし、これを前提とした「生命軽視の姿勢が甚だしく顕著」であるとした総合評価や判断も是認できず、生命軽視の姿勢は明らかと評価できるに止まる、とした。また、同種事案に関する近時の量刑からも、性的な目的や動機により1名の被害者が殺害された事案であっても、殺害の計画性が認められず性的被害も伴わない場合には同種前科のない者に対し死刑が選択されてはおらず、公平の観点から死刑の選択が許容されるとはいえないとして、原判決を破棄して無期懲役とした。 検察側が上告したが、上告審も控訴審判決を支持し、無期懲役が確定した。 |